『仮想通貨革命』(野口悠紀雄著)を読んで

早稲田大学野口悠紀雄教授の著書『仮想通貨革命』は、仮想通貨の概要を理解するのに最適な書籍といえるのではないだろうか。いかにも挑戦的なタイトルとは打って変わって、内容は現実に即していて、仮想通貨とは何か、現状どうなっているか、社会にどのような変化をもたらすのかという3点について分かりやく著書の意見を交えて解説されていた。

 

まず本を読んで驚いたのは、仮想通貨というとビットコインのことだと思っていたのだが、ビットコインは仮想通貨のひとつに過ぎず、ライトコインやカラーコインなど仮想通貨には様々な種類があるということだった。

 

仮想通貨が社会に与える影響について非常に興味がありこの本を手にとってみたわけで、仮想通貨革命と題名を打っているのだから、著者の主張はビットコインが今ある貨幣を置き換えるといったようなものだと推察した。しかし、著者は現状そこまでドラスティックな変革は起こらないと考えていて、現段階では国際送金など一部の法定貨幣の不便を解消してくれるものとして機能すると述べていた。

 

現在留学している身として、現状の国際送金の不便はつくづく感じている。一般的な、コルレスバンク(国際送金にあたり中央銀行のように銀行の間にたって決済をする銀行。)を経由した送金だと一回の送金で手数料が6000円以上(日本-アメリカ)かかってしまうし、マネーグラム等の格安送金手段は1000円程度で送金可能だが、窓口で受け取る必要(窓口の数少ない)があり、非常に不便である。

 

こうした現状の国際送金をインターネットをとおして素早く簡単にできるビットコインはそれだけでも普及した場合の影響は大きいと感じた。

 

ビットコインとは何かという質問への端的な回答は、著書より引用すると

 「一つの電子コインは、連続するデジタル署名のチェーンと定義されている」

 である。すなわち、電子コインとはその過去と現在の所有者の署名のリストである。

 

ビットコインの基本的な特徴は、以下の二つである。

1.金などの実物資産の裏付けがない

2.政府・中央銀行や特例の発行会社などの信頼性のある主体が発行・管理していない

 

電子マネーと仮想通貨の比較をしている章において、おもしろい記述があった。交通会社によるスイカなどの電子マネーの導入は、利用者の利便性の向上だけでなく、交通会社にとっても様々なメリットがあったということである。利用者の移動履歴のデータ等の入手が可能になっただけでなく、改札機のメンテナンス費用が大幅に削減されたとのことだ。そういえば昔よく磁気の切符が改札機に詰まったりして、メンテナンス業者の人が改札機を整備していたが、最近はめっきりそういった光景を見なくなった。

 

・マネタリーベースとマネーストックの対比

マネーストックは、市中に出回っている通貨。

 

異次元金融緩和政策自体は、マネーストックを増やしインフレを加速するという良い面もあるが、金融危機時の対応策がなくなってしまうため危険。

 

・仮想通貨と電子マネーの対比

電子マネーは一度使うと発行元に戻る仕組みなのに対し、仮想通貨は所有権を移転できる。そのため電子マネーに比べて、仮想通貨は運営コストが抑えられる。

 

国債の貨幣化について

マネーストックを増やしている理由は、インフレを加速するという名目で行われているが、実は国債中央銀行に買わして財源を確保するのが本当の目的なのではないかという主張。

 

 メモ

アダム・スミスのいう知性による社会の形成とは。